— ラガード研究所-資料室-

エントロピー増大の原理(熱力学第二法則)から見た土偶

なぜこんな古いものに興味があるのかを不思議に思う。常識的に考れば、古いものよりも、新しいものの方がよりよいものだ。

電気機器だったり、新しいシステムだったり。が、例えば土偶などを見てしまうとなんともいえない魅力を感じてしまう。今日の技術では容易につくれるにもかかわらずだ。

自分は、なぜ土偶に興味を持つのだろう。

ノスタルジーからか、有名な人からの評価が高いからか、今に残るまでの確率の低さから価値があるように思うのか、黄金律からか、時間経過による(空気による酸化や、使っていくにつれ傷がついたりする)仕事量の多さ(柳宗悦の他力道)から無限の色に変化したからか。

「左の本 考古学ライブラリー 21 土偶 米田耕之助 ニューサイエンス社」


その魅力を考えるのに一つの視点として物理学に、エントロピー増大の原理(熱力学第二法則)というものを見つけた。

エントロピー増大の原理(S=k log W)とは、ある出来事の起こり方が途方もなく多ければ、それが起こる確率は途方もなく高くなるという原理だ。

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例)
一冊の本をほどいてできたたくさんの紙を空中に高く放り上げ、落ちてきた紙を拾い集めてきれいに積み重ねた時、ページが順番通りになっている確率よりも、順番が狂っている確率のほうがはるかに高い。
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なぜなら、めちゃくちゃにする方法はたくさんあるのに対して、正しい順番に並べる方法はひとつしかない。

エントロピーの言葉で言えば、ある物理的状態を実現させる方法がたくさんあることを「エントロピーの高い(秩序の低い)状態」といい、その方法が少ないことを「エントロピーの低い(秩序が高い)状態」という。

自分の部屋が時間とともに乱雑に汚くなっていくのもエントロピー増大の原理だと言い訳できる。これを時間軸で考えた場合、物理系は、エントロピーの高い(秩序の低い)状態に向かってじょじょに変化する。割れた卵が元にもどらないと考えるのもこのためだ(割れ方は沢山あるが、割れていない状態(すべての殻のピースが順番通り揃っている状態)は一つしかない。)。また、時間を巻き戻していくとビックバンはエントロピーがきわめて低い(きわめて秩序が高い)状態でないと成り立たないという考えが生まれる、詳しくは(宇宙を織りなすもの上巻 p253参照)

この考え方から、過去(例えば縄文時代)は現代に比べてエントロピーの低い(秩序の高い)状態だったといえる。今現在の方が秩序だって見えるが、物理学では今現在のほうが秩序が低い状態になる。

 縄文時代(13,000年前)の土偶が魅力的に映るのも,全てにおいて秩序の高い時代に作られたものだからかもしれない。

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