— ラガード研究所-資料室-

一人目の星の先生、廣瀬匠(Sho Hirose)先生のご紹介です。

廣瀬さんは一年半前に、ヤマグチノリコさん主催の「左京区デ読書」[天文学、それは宇宙の歴史と人間の歴史が交わる物語]にて講師をされていました。
そのDMをたまたま本屋で見かけて、とてもおもしろそうだと思い講習会に参加したのがきっかけでした。
講習会では、昔の人たちの宇宙観についてや暦の歴史、小惑星探査機ハヤブサについてなど古代天文学から現代天文学までの幅広いお話をして頂きました。

その時のお話で感じたのは、天文学とは一つの分野の学問というよりかは、日常のあらゆる部分に浸透している学問なんだという強い印象を受けました。それがあまりにも日常に浸透しているのでなかなか見つけることが出来ない(1年ってどうやって決まったのか、1日はなんで24時間?)。それを廣瀬さんがちょっとずつ目に見える形にあぶり出してくれました。

天文学が日常に潜んでいる例として、「オルバースのパラドックス」

というものがあります。それは、

「夜はなぜ暗いんだろう」「宇宙が永遠と存在していたのなら夜でも無限の星の光で明るいはずだ!」

というお話です。

 

夜が暗いという当たり前の現象から、それが実は宇宙というものは永遠ではなく、宇宙にはある時点で始まりというものを持つという意味に他ならないという考えに行き着く。

日常の当たり前に見える現象にメスを入れることで、ほんの少しだけ日常が違って見えてくる。

そのほんの少しだけ違って見える日常では、案外面白い出来事が沢山起こっていたりしてなんだか退屈ではない日常に見えてきたりする、そこが天文学の面白いところだと思います。

Lagado研究所 課外授業-星空教室-では、そんな日常の現象を廣瀬先生と一緒に探っていきたいと思います。

 

それでは、廣瀬さんについてのご紹介です。

 

廣瀬匠(Sho Hirose)さん
(7月28日のイベントの先生です。)

1981年千葉生まれ。
天文ライター兼編集者として星空案内や現代天文学の話題を雑誌等で発信。星のソムリエ。
現在京都大学大学院では中世インド・アラビアを中心とした天文学史を研究中。

 

廣瀬先生に5つの質問に答えて頂きました。

 

>1.星に興味を持ったきっかけを教えてください。

漠然とですが、宇宙への興味は昔からあったと思います。
親によると4,5歳の頃には太陽系の惑星をスケッチブックに
描いていたそうなので…
ただ、それが形になったのは中学2年生の頃ですね。
1つは、理科の授業で天文の話題が登場したこと。

もう1つは、本当にくだらないきっかけですが…
下校するときのバスでよく寝過ごしたことです。
どういうことかと言いますと、僕の実家は街から少し離れた
山あいにありまして、バスの終点ともなると
さらに田舎、まさに山の中と言ってもいいくらいの場所だったんです。
本数が少ないので終点から家に戻るバスもありません。
日が落ちて、街灯りから遠く離れた暗く長い道のりを
歩くときの唯一の暇潰しが星を見ることでした。
気がついたら、星座のつなぎ方も星の名前も覚えていましたね。

> 2.今は、どのような星に関する活動をされていますか?

研究活動と普及活動の両方です。

星の研究と言えば、宇宙に関する新しい知識を追い求める天文学者を
思い浮かべられるかもしれませんが、僕は昔の天文学者たちによる
知的な営みをたどる「天文学史」を研究しています。
特に専門として選んだのは古代インドの天文学で、
サンスクリット(学術で使われたインドの古典的言語)で
書かれた資料を読み解いています。

普及活動では、星空案内人(通称「星のソムリエ」)という
資格を持っていて、時々講演や星空解説をしています。
また、天文学史の研究を始めるまでは(株)アストロアーツに
所属して天文に関する記事を執筆・編集していたので、
今でも記事を書くことがあります。

> 3.今一番興味のある宇宙のトピックを教えてください。

現代天文学について言えば、何か特定のトピックに注目している
というより、日々世界中で発表されているあらゆる話題に
アンテナを張っています。ちなみにTwitterでもその情報を共有しています。

天文学史の研究者(の卵)として意識しているトピックは、
天文学者が考える最先端の宇宙像と、天文学者以外の人
(特に権力者や宗教家)が持っている宇宙観の関係です。
特にインドでは両者の隔たりが大きい(たとえば天文学者は
地球が丸いことを知っていたのに一般には大地が平らだと
考えられていたことなど)のでその背景を追究したいです。

> 4.Lagado研究所の授業はどのようにしていきたいですか?

星空の下、黒板とチョークだけで行われる授業って
なかなか無いですよね。
私自身、パソコンで作成したスライドを投影するだけの
授業をすることがほとんどなので、
今回の授業では新しい境地を開拓するつもりで臨みたいです。

> 5.来てくれるお客様へ一言お願いします。

是非、大量の「?」を用意して来てください。
みなさまの「?」をどれだけ減らせるかわかりませんし、
下手をすると「?」が増えてしまうかもしれませんが、
多くの新しい「!」を持って帰っていただける自信があります。

また、今月廣瀬匠さんの本が出版されました。

ときめく星空図鑑 (Book for discovery) 

永田美絵 (著), 廣瀬 匠 (著)

内容紹介

星空観察がステキな趣味になる。はじめての星空がよくわかる一冊です。
ふだん見上げている夜空に、こんなに美しい星たちが瞬いていることを知っていますか?
本書では、折々によく見られる星たちを厳選して、四季別に掲載。
プラネタリウム解説員の永田美絵さんによるやさしい解説で、星の位置や見つけかた、まつわるエピソードなど、はじめてでも星のことがよくわかります。
太古から愛される星座たちの誕生のお話から、それぞれの星にまつわる神話、宇宙のしくみ、天体観察と撮影のポイントまでナビゲート。
こちらもぜひ本屋さんなどでお探しになってください。

 

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