— ラガード研究所-資料室-

第一弾–アウトリーチ–河村聡人 宇宙物理学修士論文展 後日記

2月、3月とLagado研究所では、河村聡人さんにお願いをいたしまして論文展をさせて頂きました。
この論文は、太陽圏に関することが書かれた修士論文で、およそ50ページあります。その論文の冒頭に書かれていた言葉がこちらです。
20140420-01
“Nature creates curved lines while humans create straight lines.”
“自然は曲線を創り人間は直線を創る。”湯川秀樹

引用元
本の中の世界
著者湯川秀樹
「自然は曲線を創り人間は直線を創る。往復の車中から窓外の景色をぼんやり眺めてゐると、不意にこんな言葉が頭に浮ぶ。遠近の丘陵の輪郭、草木の枝の一本々々、葉の一枚々々の末に至るまで、無数の線や面が錯綜してゐるが、その中に一つとして真直な線や完全に平らな面はない。これに反して田園は直線をもって区画され、その問に点綴されてゐる人家の屋根、壁等の全てが直線と平面とを基調とした図形である。

自然界には何故曲線ばかりが現はれるか。その理由は簡単である。特別の理由なくして、偶然に直線が実現される確率は、その他の一般の曲線が実現される確率に比して無限に小さいからである。しからば人間は何故に直線を選ぶか。それが最も簡単な規則に従ふといふ意味において、取扱ひに最も便利だからである。

自然の創造物である人間の肉体もまた複雑微妙な曲線から構成されてゐる。併し人間の精神は却って自然の奥深く探求することによって、その曲線的な外貌の中に潜む直線的な骨格を発見した。実際今日知られてゐる自然法則の殆ど全部は、何等かの意味において直線的なものである。しかし更に奥深く進めば再び直線的でない自然の神髄に触れるのではなからうか。ここに一つの問題、特に理論物理学の今後の問題があるのではなからうか。

この短文が書かれるより、ずっと以前にアインシュタインは一般相対論を樹立した。そこに現われる重力場の基礎方程式は、非直線的であった。そして、また空間自身も曲り得たのである。そこに直線的でない自然の本質が顔を出していた。しかし、それは極微とは反対のいわば極大の世界に関するものであった。この数年来、ハイゼンベルクなどが素粒子の世界における非直線性を大いに問題にしている。ところが非直線的な自然法則から、ある近似または特別な場合として直線的な規則性を導き出すことは、数学的に極度にむつかしい。それでアインシュタインの一般相対論のような美事な成功には、なかなか到達しそうもないのである。

20140420-02
↑湯川秀樹 日本で初めてノーベル賞を受賞
20140420-04
河村さんが教えてくれたマクスウェルの方程式
20140420-05
20140420-03
河村さんが研究をされている「太陽圏」という太陽風の届く範囲の説明図。
20130201-01
↑河村聡人 宇宙物理学修士論文展

 

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